七七日町裏通り

メインブログを冒険者に乗っ取られまして

ヒラメオデッセイその2

※ゲームシナリオと関係ありません

「びんちょう、少し休みを貰いたいんだが、良いか?」

「勿論、良いけど……えんがわが行って大丈夫なの?」

「大丈夫かどうかは解んないけど、心配だしな。……お前も、良かったらドゥルーズのこと気にしてくれると、嬉しいかも」

「勿論!!色々よくして貰ってるからね」

「……何があったんだ?」

「あのさ、エトリアの頃からえんがわの知り合いだった方のギルドで……色々あったみたいで」

「……ああ、そう言う事か」

「勿論メンバーのことも心配です。ですが、わたくしが一番気がかりなのは、そのギルドにヒラメの双子の妹さんがいらっしゃることですわね」

「ああ、あのガン子ちゃん」

「それは心配だなあ。ヒラメもいつも余裕無さそうだし……。かんぱち、良ければ気にかけて貰っても良いかな?」

「……何故わたくしが?」

「……まあ、なついてるしね(懐いているというか何と言うか)」

「ヒラメが、わたくしに?」

「それにお前も何かとヒラメのこと気にしてやってるだろ?」

「まあ、そうですけど。それは仲間としてですね……」

「かんぱちちゃん、逃げちゃだめだよ」

「はい、ですわ……」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「兄上ーーーーーー!!!!!!帰ってきたであります!!!!!」

「おかえり」

「……カレイは?」

「まだ塞ぎ込んでる。今はそっとしておいてやれ」

「はい……」

「……」

(何処となく兄上も元気が無いように思えるであります。当たり前のことであります。……自分に何が出来るのでありましょうか……)

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「びんちょうさんが『胡散臭い』と言って、受け無かった依頼……一人で受けるのなら、丁度良いかもしれないであります」

(……強ければ、兄上を安心させてあげられるのでありますか? 強ければ、カレイを守れたのでありますか?)

(……いえ、大丈夫です。なんたって自分はあの英雄の弟なんですから)

(何も心配ありません……努力は必ず報われます)

(そうです。今ギルドに自分を迎え入れてくださる皆さんの為にも、兄上を安心させるためにも、生意気だけどまあ可愛げが無いことも無い妹の為にも……自分は……)

「ってはさみカブトでありますかーーーーーーーーー!!!!????」

「は、はあ……はぁ……。えっと……衛士さんは……」

「…っ!?」

「……利用、された?」

「ちょっと!!!!ヒラメ!!!!!!」

「カ、カレイ!?なんでこんなところに!?!?」

「さっきあんたが一人で迷宮に入っていくところが見えたから、急いで追いかけて来たの!!……はぁ……はぁ……」

(膝が震えてる……呼吸が乱れている……仲間を喪って、樹海が怖いのに……自分の為に……)

(……自分は何と愚かなのでしょうか)

「……大丈夫、でありますか?」

「それはこっちの台詞だよ。怪我とか、無い?」
「……はい」

「……今日の件は兄さんに黙っておくわ。絶対気を失うし、絶対その怪しい衛士をハチの巣にするだろうし」

「……ごめんなさい、情けない兄貴で」

「別に良いよ。あんたのこと頼りがいのある兄貴だと思ったこと無いもん」

「ははっ……。そう考えると兄上って偉大ですね」

「……」

「自分も兄上の弟ですから、もっと兄上を見習って、

「……もしかして、兄さんに追いつこうと思って、一人で三層まで行ったの?」

「……」

「なれる訳ないじゃない、あんたが兄さんみたいに」

「な、でもそれは……!!」

「なれっこないわよ!!だって兄さんは、あたし達と血が繋がってない、養子なんだから!!」

「っ!?」

「孤児のえんがわさんとしらすさんと幼馴染って時点で気づきなよ!! あたし達は英雄『黒い死神』とは赤の他人!!!!あたし達は大切な人も守れない、才能も無い、ただの樹海の養分ってこと!!!」

「……」

「……ごめん」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「……二人とも遅いなあ」

「本当にあの子たちのことを可愛がっているんだな」

「ああ。世界で一番大切な俺の妹と弟だ」

「ふーん……」

「いや、なんでお前がここにいるんだよ」

「別に良いけどさ、それならなんで実の兄弟じゃないこと、教えてあげないの?」

「言える訳ないだろ……。カレイには途中でばれたけど、ヒラメは……『英雄の弟』であることをアイデンティティにしてるんだから」

「自信無いんだねー」

「俺は弟と妹が生きる時代を平和にしたかったから、戦場に身を投じたんだ」

「その結果『英雄』になって、自分の弟がそれに縛られることになるとはな」

「……」

「結果は結果だ。今更どうすることも出来ない。あまり自分を責めるなよ」

「……ああ」